第21回 「アウラの漂う都市づくり」
基本情報
<テーマ>
「アウラの漂う都市づくり」
1.広告都市「渋谷」
2.「渋谷」の変貌
3.「見られる不安」から「見られない不安」へ
4.「未成熟都市」
5.都市のアウラ
<講師> 関谷 浩史(せきやひろし)様
<プロフィール>
生年月日:1964年8月生まれ
出身地:東京
最終学歴:1999年 慶応義塾大学政策・メディア研究科
後期博士課程単位習得
職歴: 1990年 鹿島建設A/E総事業本部建築設計部
1999年 慶応義塾大学環境情報学部助手
2000年 同大学専任講師
2002年 凸版印刷経営企画本部 公共情報化推進部係長
2004年 県立新潟女子短期大学生活科学科助教授(現在に至る)
資格: 工学博士
一級建築士
<当日の講演内容>
渋谷の街は、いかにも自然発生したものの様に見えるが、西武(セゾングループ)の企業戦略によって意図的に作られたものである。渋谷の、この20年の変貌した姿をケーススタディーとし、都市のアウラについて考察していく。

1、渋谷の街の変貌
渋谷は、80年代にセゾングループによって、人々のライフスタイルを向上させるという名目のもとに、消費活動を活発化させる仕掛けを施した都市開発の賜物であった(西武村構想)。
1973年〜1976年には公園通りにおいて、通り自体の性格を変える試みがなされた。
点と点を結んで線情報にする考え方(回遊性のある街)で、通り全体を楽しく過ごせる街に作り変え、簡易性の向上を図った。(例 パルコpart 2、スペイン坂)
1981年からは、情報性を意識した施設が作られ始める。(例 パルコpart 3のオープンエアーのスタジオ、文化村)
ごく最近では、丸山町にアングラの劇場など、サブカルチャーを意識した展開になりつつある。
2、広告都市「渋谷」
西武、パルコでは、建物の内部空間を実際の街のように設計し、室内を都市化した。
消費欲望を刺激するためショウウィンドウを多用し、また、街全体を広告空間化してサブリミナル効果(潜在意識に働きかける効果)を得た。
1、2、をふまえて、渋谷を都市計画的に分析
- 外部を隠蔽―資本を感じさせない(ディズニーランド方式)
- 批判の隠蔽―メディアコントロール(タウン誌を発刊し、客観的な思考を抑制。冷めたコメントをさせない、など)
- 私自信の隠蔽―渋谷の街では、個人的な価値観はなくなる。
3、「見られる不安」から「「見られない不安」へ
「見られる不安」は、「パノプティコン的不安」ともいわれ、これを利用すると最小限の管理システムで人々をコントロールできる。80年代、西武はこれを利用して人々の行動をコントロールし、都市の広告化によって人々の欲望をコントロールした。
ところが、90年代においてはこれが機能しなくなる。原因として、
- 量販店、コンビニなど資本を連想させる店舗が増え、ディズニーランドのレトリックが失われた。
- センター街を中心として風俗店が流入し、メディアの批判を受ける。
- サブカルチャーの当代で、“私の自覚”が意識され始める。これによって、“街の主人公は自分”となる。
(例、ガングロ、チーマー)
以上の変化によって、広告都市として機能しなくなり、これまでの文化を維持できなくなる。
3、による渋谷の街の変化は以下のとおりである。
現在の渋谷は、便利だから行くが、雑然としていてあまり行きたくない街と評価されているようである。このことから、文化的評価から、経済的評価に移行したといえる。
かつての公園通りの開発では回遊性を重視していたが、現在ではセンター街充足型の街になった。
さらに2000年代にはいると、情報化社会の浸透が進み、情報を求める人が特定の場所に集まる必要がなくなり始めた。都市をザッピングするように扱いはじめ(例 QフロントのTSUTAYA、ランキンランキン)、都市を楽しむ物語性が喪失する(雑誌で郊外が特集されだす)。
上記により、「パノプティコン的不安」によるコントロールが失われ、同時に「見られない不安」が現れる。「見られない不安」とは、常に他者との関わりを持っていたい(自分に注目して欲しい)願望を言い換えた言葉である。例として、ホームページ上にプライバシーをのせる、それを覗く、常にメールのやりとりをすることが挙げられる。これらが一般化することで、公共空間の私物化が進む(儀礼的無関心という)。
文化を通じた欲望のコントロールが完全に不可能なレベルになっていく。
4、都市のアウラ
アウラとは、物体から発する微妙な雰囲気のこと(ベンヤヤミンは、複製芸術ではないオリジナルな作品がもつものとする)。近代都市はアウラを消すように作られている。
都市のアウラの作り方
“3つのC”
- コラボレーション(Collaboration)
オピニオンリーダーを集めて都市のブランディングを図る。
- コミュニケーション(Communication)
キャラクターやチャットを利用し、都市の潜在的情報をいろいろな形で連動させる。
- コンティニエンス(Continiens)
現実と仮想空間を融合させる。コンピューターを持つのではなく、着る。
3Cが正しく循環すると、アウラに到達するのではないか。これらは、人間の都市の本質であり、基本的な考え方である。
5、未成熟都市
村上隆の成功により、「かわいい」という言葉が国際的なお墨付きを得た。
これにより、“未成熟”という価値観が生まれた。同時にスーパーフラット(空間の奥行を否定)の流行で、歴史、権威、制度、全てから開放された「浮遊する都市」に若者が親近感を感じ始めた。
6、吉祥寺の未来
予想は二つにわかれている。
- 都市の中に意味を求めて、仕掛けの中で役割を演じる。
- フラットな世界。活性化するが、リスクを覚悟しなければならない(治安の悪化など)
どちらに進んでいくかはまだわからない。
以上